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2021.04.01 FINDAT、フォーミュラリー
フォーミュラリーとは?
改訂:2023年6月8日
フォーミュラリーとは、医療機関において患者に対して最も有効・安全で経済的な医薬品の使用方針とされ、欧米を中心に1990年代から導入されている医薬品マネジメントの手法です。
わが国でも、医療の効率化等の観点から本格的導入に向けて機運が高まっています。厚生労働省により2020年に実施された病院におけるフォーミュラリーの実態調査では、フォーミュラリーを定めている病院は25.7%で、フォーミュラリー作成のメリットとして「薬物治療の質の向上」「業務の効率化」「医療費削減」があげられています。
ファーマシューティカルケア理念に基づいた医薬品使用の基準
●欧米で導入されている医薬品使用基準の考え方
フォーミュラリー(Formulary)とは、「医療機関において、患者に対する最も有効で経済的な医薬品の使用方針」です。また、フォーミュラリーはグローバルスタンダードになっているファーマシューティカルケアの理念に基づいた考え方であり、英国の場合、医薬品の適正使用と経済効率の観点から、1990年代には各医療機関・地域ごとのフォーミュラリー作成が本格化し、地域フォーミュラリーとして定着しています。米国でも医療機関や保険会社が独自にフォーミュラリーを作成し、最適な医療提供と支出の削減に取り組んでいます。このようにフォーミュラリーは、欧米先進国ですでに導入・活用されている医薬品適正使用の標準的な考え方です。
●医療2025年問題から本格導入の機運が高まる
急速に進む少子高齢化に伴い、医療費は、2022年予算ベースで40兆円を超え、その医薬品費は、ジェネリック医薬品への切り替えが80%を超えても、なお10兆円と言われています。
現在進行中の医療・介護の提供体制の改革のゴール、つまり団塊世代の全員が後期高齢者に達する2025年に向けて、医療費削減をどのように進めるかが喫緊の課題になっています。
医療費削減策として、ジェネリック医薬品使用促進が勧められてきましたが、更なる薬剤費削減のためには、次の一手が必須です。それが、フォーミュラリーです。
フォーミュラリーは限られた医療資源の有効活用につながる
●フォーミュラリー作成のメリット
フォーミュラリー作成のメリットとしては、ジェネリック医薬品の有効活用につながる等の経済性に関するイメージが先行しがちですが、「薬物治療の質の維持・標準化」も重要です。エビデンスベースでフォーミュラリーを作成することで、合理的な治療の実践につながります。
医療機関においては、採用医薬品が整理されることによる医療安全への寄与、入院に伴う医薬品鑑別の簡略化もメリットとしてあげられます。さらに医療機関だけでなく、流通(医薬品卸)においては、効率的な在庫管理と配送が可能になること、国・自治体・保険者においては、医薬品の有効活用、災害対策、医療の質の担保、医療費削減等があげられます。
●フォーミュラリーマネジメントの必要性
フォーミュラリーの策定は、「医療機関において、患者に対する最も有効で経済的な医薬品の使用方針」に沿った処方ルールです。この方針に従って医薬品が使用されているかどうかをマネジメントする必要があります。このマネジメントには、フォーミュラリーの更新管理、医薬品の使用実態調査、副作用モニタリング、医薬品に関する過誤の対策、医薬品使用に伴う臨床ガイドラインの策定などが含まれます。フォーミュラリーで推奨される医薬品が有効に、安全に、かつ経済的に使用されているかどうか、適切に管理することが真の医薬品費の削減につながります。
包括評価のDPC制度下でのジェネリック医薬品の活用
●DPC病院にはフォーミュラリーが必須
令和2年度診療報酬改定においても、DPC病院のジェネリック医薬品の使用率(後発医薬品係数)は機能評価係数Ⅰでの評価ですが、DPC病院では数量ベースで常に60~80%のシェアを維持することが経営的に求められ、病院経営におけるジェネリック医薬品の重要度は少しも変わりません。ただし、評価される数量シェアは外来も含めたすべての医薬品をベースにシェアを割り出すことになっており、注意が必要です。
また、後発医薬品数量ベースの算出では、ジェネリック医薬品のない先発医薬品の数量は除外されるところが盲点です。ジェネリック医薬品のない先発医薬品の使用が増えれば、後発医薬品数量ベースは変動しないものの、薬剤費は上昇します。そのため、同じ薬効群において、ジェネリック医薬品を優先的に使用する方針、つまりフォーミュラリーを作成することが、薬剤費の削減に繋がり、病院経営を利することになります。
そしてDPC病院において、薬剤費を削減することは収益増に直結します。この薬剤費は、薬価差ではなく購入価格で判断されます。
地域包括ケアシステムとフォーミュラリー
●地域フォーミュラリー
フォーミュラリーの作成はDPC病院では必須ですが、年間10兆円にのぼる国内の医薬品費を削減するためには、地域単位での医薬品の使用指針として地域フォーミュラリーを作成することが最も効果的です。使用量の多い生活習慣病等の内服薬は、医療機関の多くが外来で処方しており、その適正化にはフォーミュラリーが役立ちます。
地域フォーミュラリーは、地域の医師会や薬剤師会、保険者が話し合って作成することが望ましいです。実例として、地域医療連携法人、自治体・医師会・薬剤師会の三者、地域の数病院が主体的に策定した地域フォーミュラリーが挙げられます。
財務省は社会保障会議で、2024年から始まる第4期医療費適正化計画策定に向けて、都道府県医療費適正化計画の見直しとして、後発医薬品の使用促進のみならず、地域フォーミュラリーの策定、多剤・重複投薬の解消、リフィル処方への切り替えなどを目標に盛り込むことを提言しています。その実効性を高めるために、都道府県や保険者が主体となり、体制構築を図るべきであることも示されています。
日本の医療改革は待ったなし
カギを握るのはフォーミュラリーの普及と定着
●フォーミュラリー普及のポイントは薬剤師
医療財源のひっ迫が深刻さを増しており、国民皆保険の持続性を確保するために日本の医療改革は待ったなしの状況です。患者の医薬品費負担の軽減、国や国保(自治体)・協会けんぽ・健保組合の医療費の支払いの削減につながるフォーミュラリーを定着させることが医療の問題解決のカギとなります。また、そこでキーマンになるのは薬の専門家である薬剤師です。患者のために責任ある薬物治療を提供するというファーマシューティカルケアの基本理念をベースに、フォーミュラリーの普及定着に積極的に取り組む役割を薬剤師が他の医療者と協同し、担っていきます。
●フォーミュラリーのPDCAサイクル
フォーミュラリーを効率的かつ有効に運営するためには、フォーミュラリーの作成(Plan)から運用(Do)、そしてフォーミュラリーの評価をレセプトデータから行い(Check)、レセプトデータ解析から改善案を提案し(Action)、フォーミュラリーを修正して運用するというPDCAサイクルを回すことが理想になります。そしてこのフォーミュラリーのPDCAサイクルを回すためには、自治体・医療機関・診療所・薬局・保険者が一体となることが効果的かつ効率的です。
●医療機関において効率的なPDCAサイクルを実現するために
国内外のガイドラインや原著論文など、医薬品情報は日進月歩です。膨大な量の情報源の中から、必要な情報を探して評価をするためには相当な時間と労力を要するため、医療機関で実際にフォーミュラリーを作成し、更新メンテナンスを行うためには、適切に評価された二次資料を活用することが効率的です。そのためにFINDATが有用となります。
FINDATは、網羅的に収集した医薬品情報を中立的に評価し、見やすく加工した資料をご提供しています。
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