聖マリアンナ医科大学病院 様
INTERVIEW
FINDATをフォーミュラリーマネジメントに有効活用
国内でも早い段階である2014年からフォーミュラリー作成を進めている聖マリアンナ医科大学病院。FINDAT導入後は、フォーミュラリー作成はもちろん、新薬評価や薬効群比較レビューなどの機能を活用していただいています。
今回は、聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の田中先生、坂上先生、有木先生、小野寺先生に、FINDATをどのような場面で使われているのか、導入後の効果などについてお話を伺いました。
フォーミュラリー作成の国内先駆者が、院内で理解を得るまで
貴院では2014年からフォーミュラリー作成を進められています。国内でも非常に早い段階でのスタートですが、初めはご苦労も多かったのではないでしょうか。
有木先生
当時、当院では「大学病院だから先発品を使うのが当然だ」といった雰囲気が少なからずありました。フォーミュラリーは基本的に後発品を第1選択薬にするので、理解してもらうのは大変でしたね。
フォーミュラリーに対する風向きが変わったのはどのようなタイミングでしたか?
有木先生
ジェネリック医薬品が世の中で認められてきたあたりで風向きが変わったんじゃないかなと思います。
フォーミュラリーが経済財政諮問会議でも取り上げられ、聖マリアンナ医科大学病院での事例などが紹介されるようになったあたりから、当院の薬剤部に対する風当たりが弱くなったように感じます。
それからフォーミュラリー以外にもMUE(医薬品使用実態調査)など薬剤部の活動内容が少しずつ浸透していったのも大きいですね。また、若い頃からジェネリックに触れている医師が年齢を重ね、上級医になられてきたのも理解が進んだ要因かもしれません。
世間の流れもありながら、様々な薬剤部の活動を通じて少しずつフォーミュラリーへの理解が進んだのですね。理解を促すため、各診療科の医師への説明についてはどうされていますか?
有木先生
第2選択薬は使ったらいけないのか、使用できる薬に制限をかけるのか、などの質問はよくいただきますね。その際は、地道に「第1選択薬を使える場合は選んでいただいて、第1選択薬が使えなかったり、使いにくかったりする患者さまであれば第2選択薬も選択できる」ということはお伝えしていて。使用推奨基準とうたっているので、強制ではないと説明し納得してもらっています。
強制ではないなかでも、第1選択薬が選ばれやすくなるような取り組みはされていますか?
小野寺先生
第2選択薬を選んだときに、「院内フォーミュラリーでは第2選択薬の薬剤です。使用制限をご確認ください」というポップアップが電子カルテに出る仕組みです。ただし、それで第2選択薬を選べないわけではなく、注意喚起は行ったうえで処方できるようになっています。
2014年からフォーミュラリーを作成されて、導入後の効果は感じられていますか?
田中先生
すべての採用医薬品について1年ごとに処方量の比較を行っていますが、生活習慣病の薬は大きな影響がありました。もともとの処方量によって結果も変わってくるので、生活習慣病は処方量も多いぶん削減効果も大きかったです。
フォーミュラリー作成にかかる時間が「半分以下」に
コンスタントにフォーミュラリーを作成されていますが、目標などは設定されていますか?
田中先生
年に4薬効群という目標はありますが、それに縛られているわけではないですね。今は年に2薬効群ほどです。
小野寺先生
作成のステップとしては、原案を薬剤部で検討したあと、関係する診療科の医師に集まっていただき小委員会を開いて、問題がなければ薬事委員会にかける流れです。フォーミュラリーを作ってから承認されるまである程度時間がかかるので、できても年に2薬効群ぐらいですね。
坂上先生
グループの4病院による薬事合同委員会で、各施設のフォーミュラリー作成と運用情報を共有し、法人として医薬品の適正使用と購入費削減を進めています。また、フォーミュラリー推進は法人の中期計画にも組み込まれていて。
フォーミュラリーを1つ作れば医薬品購入費が200万円ほど削減できると見越して、新病院での予算配分や人員配置について希望を提示しています。
フォーミュラリーを作成する際、FINDATはどのような場面で活用されていますか?
小野寺先生
たとえば今回、神経障害性疼痛の分野で作ることが決まった際に、FINDATの標準フォーミュラリー機能に同分野のものがあったので参考にしました。一から作るとなると、あらゆるガイドラインやPubMedを見て、薬の位置付けや臨床試験、head-to-headの有無など情報を網羅的に調べないといけないのがとても大変で。その点、FINDATはフォーミュラリーの解説と薬効群レビューにも詳細な情報が書いてあるので助かっています。
結果的に、FINDATの選択薬の一つが当院ではほとんど使われていない薬だったため、実臨床に合わせ一部変更したフォーミュラリーになりましたが、FINDATに情報がそろっていたので活用できました。
FINDATが調査時間の短縮につながっている実感はありますか?
小野寺先生
はい。1人である程度の情報を得ようとすると、通常業務と並行しておおよそ1週間くらいかかると思います。さらにその情報を要約したうえで、第1選択薬や第2選択薬を決め、表まで作ると丸2週間はかかりますね。
FINDATにはすでに収集された情報があるので、導入してからは半分以下の時間で済んでいるのではないでしょうか。
FINDATの新薬評価が薬事委員会の活性化に貢献
標準フォーミュラリーのほかに、よく使われている機能はありますか?
田中先生
薬事委員会に提出する資料を作成するため、新薬評価はよく使っています。これまでは自分たちで一から作っていたので非常に時間がかかっていて。DI担当者にとっては、やりがいよりもストレスのほうが大きかったかもしれないです(笑)。
小野寺先生
これまで新薬評価は作成者と査読者、最終確認のDI担当者と3人がかりで作っており、時間内の作成は難しいので時間外に作業していました。ストレスのかかる業務でしたが、薬剤部代表として薬事委員会に出す資料なのでやはり質の高いものを出したいと思いますよね。
ただそうとなると、たくさんの臨床試験やガイドラインを網羅的に調べたうえで資料に落とし込む必要があり、かなりの時間を要していました。FINDATを導入してからは、添付文書の情報を少し更新するくらいで、ほとんどそのまま活用させてもらっています。大幅に時間を削減しながら、質の高い資料が提出できるようになりました。
坂上先生
資料作成にかかる時間が短縮できたぶん、新薬評価の資料を提出する回数を増やせました。以前は半年に1つほどだったのが、今では毎月1つは提出できているので本当にありがたく思っています。
また、FINDATのコンテンツは外部の先生が作成に携わっているので、情報も正確で心強いですね。
薬事委員会で、新薬評価の資料はどのように活用されていますか?
小野寺先生
当院は新薬について仮採用の制度があり、まず医師が「この新薬を使いたい」と仮採用請書を出します。その1年後に本採用にするかの審議があるのですが、採用すべきかどうかを薬剤師の視点で説明するために新薬評価の資料を用いています。
有木先生
本採用の基準は仮採用期間中の使用量になるので、それを満たしていれば採用は可能ですが、本当に院内に必要か、院外採用だけで良いのではなど薬剤師側の意見を伝えるための材料として使っていますね。
重要な場面で使っていただけているのですね。
坂上先生
そうですね。通常の薬事委員会では、医師が申請した薬がすんなり採用されて、では代わりに1つ削りましょうといった流れが多いのですが、当院では医師が申請理由を述べたあとに薬剤師が公平中立な立場で新薬評価を説明する時間が設けられています。
以前のように、年に1~2回の評価ではイベントごとのようでしたが、今は毎月のように「この薬は本当に有用なのか、当院にとって必要な薬なのか」とディスカッションしているので、薬事委員会も常に緊張感をもって行えていますね。また、結果としてこの評価の積み重ねが、フォーミュラリーを作るうえでの基礎データにもなっていると感じます。
毎月の新薬評価によって、ほかに感じられた変化はありますか?
田中先生
薬剤師は公平中立な立場で意見を述べると認識してもらえるようになったためか、医師から採用薬について意見を求められる機会が増えたように感じます。最近だとHIF-PH阻害薬に関して、腎臓専門の医師からどれを採用すべきか中立な立場で薬剤部の意見を聞きたいと言われました。
MUEやフォーミュラリーなど日々の活動の積み重ねで、医師側からの評価も高まっているのかなと思います。
力を入れていく「医薬品使用実態調査」に薬効群比較レビューを活用
薬効群比較レビューも活用いただけているそうですね。
小野寺先生
はい。フォーミュラリー以外では、MUE(医薬品使用実態調査)に活用しています。たとえば今年、高カリウム血症の治療薬1つについて使用実態調査をする予定なのですが、調査にあたり確認しなければならない項目や、同種同効薬との違いを調べるのに薬効群比較レビューを参考にしようと考えていて。
MUEは今後、薬剤部としてもっと取り組んでいくべきという話になっています。DIだけでなく病棟担当者とも協力して、今年も含めて毎年3つの医薬品で行う予定です。
それから、同種同効薬の比較表をExcelで作って薬事委員会に提示しているのですが、その際にも薬効群比較レビューを参考にしています。
同種同効薬の比較表はどのようなものなのでしょうか?
小野寺先生
仮採用になった新薬と同種同効薬が当院で採用されていないか調べて、採用されている場合にはどのような違いがあるかを比較表で明示しています。現状でもこれだけの薬があるので、1年後にはどれを本採用にするのか、どれを削除するのか、あるいは院外処方にするのかなど、ちゃんと整理してくださいねという意味も込めて。
FINDAT以外で情報収集のために使われている医薬品データベースはありますか?また、FINDATとの使い分けはどのように行われているのでしょうか。
小野寺先生
「Lexicomp®」や「Micromedex®」、「UpToDate®」を使っています。
FINDATは、薬の位置付けや同種同効薬の違いを調べるときに使っています。「UpToDate®」や「Micromedex®」は、海外での適応有無だったり、日本だと副作用の記載が少ない場合もあるので、海外での副作用の報告を調べたりする際に使っていますね。
有木先生
ほかにも、海外の機関情報にも触れるおかげで英語を読む機会が増えました(笑)。以前は年に1、2回だったのが、現在は毎月情報が流れてくるので。
最後に、今後のFINDATに期待することを教えてください。
坂上先生
新薬評価に「今後の評価が待たれる」という風な記載があるので、新しい知見が出てきたらアップデートされていくと情報を受け取る側としては助かるなと感じます。
小野寺先生
適応追加になった際に、新薬評価が早めに更新されるとありがたいですね。 適応追加の評価は、FINDATにしかないコンテンツだと思うので楽しみにしています。
病院概要
- 名称
- 聖マリアンナ医科大学病院
- 所在地
- 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
- 開設年月日
- 昭和49年2月12日
- 病床数
- 医療法許可病床1,175床(一般病床1,123床/精神病床52床)
- 診療科目
- 総合診療内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器・肝臓内科、腎臓・高血圧内科、代謝・内分泌内科、脳神経内科、血液内科、リウマチ・膠原病・アレルギー内科、腫瘍内科、神経精神科、小児科、新生児科、消化器・一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺・内分泌外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、皮膚科、腎泌尿器外科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、病理診断科、救急科、リハビリテーション科