OUR VISION

私たちのビジョン

FINDATへの想いを語る

FINDATのサービス提供にかかわっているみなさんに、事業や日本の医療への想いを語っていただきました。

増原 慶壮

日本調剤株式会社
取締役兼FINDAT事業部長聖マリアンナ医科大学客員教授
(薬剤師/博士(薬学))

【略歴】

1975年大阪薬科大学卒、同年聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部、1978年より薬物治療モニタリングを中心とした臨床活動に従事。1995年博士(薬学)。2001年より聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部長、同年10月ファーマシューティカルケアの理念を実践するために薬剤師の病棟配置を開始、2003年DPC導入と同時にジェネリック医薬品を採用、2004年わが国初の一般名処方を開始。2010年に1病棟1名の薬剤師の配置完了。2014年院内フォーミュラリーを開始。2017年より株式会社日本医薬総合研究所 病院コンサルタントグループ部長、2018年より株式会社日本医薬総合研究所 取締役。2019年7月より現職。
著書に「アプライドセラピューティクス―症例解析にもとづく薬物治療」、「フォーミュラリー -エビデンスと経済性に基づいた薬剤選択-」他

上田 彩

FINDAT事業部 部長
(薬剤師/MSc, MRPS)

【略歴】

1999年摂南大学薬学部卒。2001年英国ロンドン大学スクール・オブ・ファーマシー臨床薬学修士課程卒。サウスエンド病院にて英国薬剤師会認定薬剤師研修課程修了後、2003年英国薬剤師免許取得。ノースウィック・パーク病院 薬剤部、ロンドン北部地域医薬品情報センター、聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部での勤務を経て、2019年より日本調剤株式会社 FINDAT事業部(旧:フォーミュラリー事業推進部)にて、医薬品情報・フォーミュラリー事業の企画・推進を統括。

医薬品情報は薬剤師が職能を発揮するための要 ~なぜFINDATを開発したのか?~

増原

わが国では、急速な少子高齢化の進行に伴う継続的な社会保障の増加により、医療費削減が喫緊の課題になっています。国は団塊の世代が後期高齢者になる2025年を現在進行中の医療・介護の提供体制の改革のゴールとしており、医薬品使用の適正化を医療従事者自らで進めることが期待されています。

上田

薬剤師として、患者さんのために最適な薬物治療を検討する際には、良質でアップデートされた医薬品情報が不可欠です。しかし、現実は、基本的な承認情報や製薬会社からの情報提供が主な情報源として使われており、欧米の薬剤師が活用している有料の二次情報データベースにアクセスできる薬剤師は限られています。同じ情報を各病院で収集していることに非効率さを覚え、もっと薬剤師や医療従事者が頼れるような、現場に即した情報があっていいのではないかと感じていました。膨大な医薬品情報の収集・評価を一元化し、医療機関へ提供するサービスをFINDATで実現したいと考えています。

増原

医薬品使用の適正化、医療費の削減を達成する手法の一つとして、医薬品の採用基準や推奨度を明確にしたフォーミュラリーが注目されており、フォーミュラリー導入の機運が、わが国でも急速に高まってきています。
そこで、日本調剤は、医薬品費の削減と標準薬物治療の推進、ジェネリック医薬品の有効活用など、社会貢献の一環として真のフォーミュラリーを作成すべく、新たにFINDAT事業を立ち上げました。

上田

FINDAT事業の根本には薬剤師のネットワーク、薬局や病院など関係なく、質の高い情報にアクセスできるサイトを薬剤師がつくるということがあります。
「なぜ日本調剤がやるのか?」と質問されることがありますが、薬剤師の質や価値が向上する事業でもあるので、そこへの投資という側面もあります。
今回の事業化に伴い、どういう形態にするかを議論するところからスタートしました。薬剤師の医薬品情報のネットワークの構想から、臨床に役立つコンテンツを充実させて、そのコンテンツをいろいろな薬剤師、医師などに使ってもらおうということで現在のWEBプラットフォームの形となりました。

増原

これからは恐らく、病院薬剤師、薬局薬剤師という区別はなくしていかなければならないと思います。医療費削減のために、入院をできるだけ短くして在宅や療養施設中心に移行してきます。同じ臨床経験を有する職能がなければ、患者さんに対して、継続的に安心できる医療を提供できません。医療の中で薬剤師は医師と対等に、薬物治療をきちんと議論できるようになるのが理想だと思います。そこはチーム医療です。今までの医薬分業は「モノ」としての医薬分業でしたが、チーム医療での「ヒト」としての医薬分業、すなわち、医師と薬剤師の役割の明確化は必要です。そのためにも薬剤師は科学的、かつ理論的な根拠を持って現場に出ないと太刀打ちできない。その意味でも、FINDATを有効に活用していただきたいと思います。

中立的・客観的な医薬品情報を提供するために ~FINDATのこだわり~

S さん

FINDAT事業部
クリニカルコミッショニンググループ
(薬剤師)

F さん

FINDAT事業部
クリニカルコミッショニンググループ
(薬剤師)

N さん

FINDAT事業部
クリニカルコミッショニンググループ
(薬剤師)

増原

FINDATの特長は、信頼性の高い情報源からの網羅的な情報収集とDI業務に即した現場目線での資料作成により、医療現場ですぐに役立つ情報を提供していることです。そして、私たちが作成した標準フォーミュラリーや薬効群比較レビューは、フォーミュラリー検討有識者委員会で審査・承認を、また、新薬評価・適応症追加評価では、臨床現場で実務に携わっている薬剤師に査読していただき、情報の中立性を担保しています。
フォーミュラリー検討有識者委員会は、専門領域の異なる医師5名、薬剤師3名、弁護士1名、医療経済学者1名、看護師1名の計11名で構成され、多方面から指摘や意見を集約できるようにしています。また、審議に諮る医薬品に関して、製薬会社とのCOI開示により、委員の中立性も求めています。FINDATを事業化するにあたり、中立性と客観性にもっともこだわりました。委員になっていただいた方々には、FINDAT事業の考え方を説明し、納得のうえで引き受けていただいています。

上田

有識者委員として、お声がけしようとしていた先生に、偶然、知り合いを介してご連絡いただいたこともありましたね。フォーミュラリーの事業に関して興味を持っていただき、お話しする中で意気投合して、委員を引き受けていただきました。現在、委員会は年5回、約2か月に1回のペースで開催しています。

Nさん

弊部のうち主に学術業務を担当している「クリニカルコミッショニンググループ」のメンバーは、標準フォーミュラリー・薬効群比較レビュー・新薬評価書・追加適応症評価書の作成や、海外規制機関から発出される情報の和訳などの実務を行っています。標準フォーミュラリーについては、有識者委員会で提示する案の作成、委員会での説明、審議結果の反映までを担います。

Fさん

コンテンツを作成するうえでは、環境や機能が異なる様々な医療機関がある中、「どのような医療機関でも満足いただけるような情報を提供する」という部分にも気を遣っています。例えば標準フォーミュラリーにおいては、あらゆる機能の医療機関にも対応できるよう、いろいろなケースを想定し、作成することが必要になります。そのため、偏りがないよう多くの情報を集めてから、状況を切り分けて吟味し、さらにまとめるところには大変さを感じます。また、DI専任薬剤師がいない、あるいは情報のアクセスに制限がある環境でも十分な情報が容易に得られるように内容を盛り込むようにしています。

Nさん

添付文書だけでは不足しやすい情報、例えば「妊産婦への投与に関する情報」などについては、国外の添付文書やガイドラインで言及されていれば掲載するようにしています。数あるガイドラインの中からどの情報をピックアップすべきかという悩みは出てきますが、その点は外部の先生とも相談しながら決めています。書籍やデータベースだけではわからない臨床目線のアドバイスをいただけるのは大変勉強になりますし、やりがいを感じます。

Sさん

私も臨床試験の結果をいかに客観的にとらえるかが非常に難しいと感じています。判断できない部分は外部の先生に助言をいただくなど、少しでも質が高くなるように努力しています。
また、作成者によって差が出ないように、評価するポイントを標準化することにも取り組んでいます。

Nさん

作成物の標準化については、週1回の定例会議や臨時ミーティングを通じて部内の認識のすり合わせを行っています。また、各コンテンツのひな形や作業手順書の見直しも随時行っています。現場でより活用しやすい資料をお届けできるよう、日々検討を重ねています。

Sさん

実務を担う中、医療機関で個々にこの業務を行うのは大変だと実感しています。だからこそFINDATに価値があると感じています。

Fさん

FINDATは、2つの面でメリットがあると考えています。1つは、地域や施設の状況にかかわらず、一定の質が担保された共通の情報をFINDATユーザーで共有できることです。もう1つは、コンテンツを作成する私たちも場所を選ばず業務が可能なので、PCとDIスキルさえあれば、よほどのことがない限り、コンテンツの充足を継続的に行えることです。

上田

医薬品を深く評価する経験を持つことは、とても大事です。それはFINDATの価値でもあるし、ネットワークを担っていく薬剤師の人たちが増えることも意味があるのではと思います。

より良い薬物治療をサポートするための挑戦は続いていく

上田

現在、医療機関などの外部へのサービス提供と並行して、日本調剤の薬局でもFINDAT活用のトライアルを実施しています。現場で患者さんのために情報を検索するときに使用してもらい、活用した事例を集めているところです。トライアル店舗を増やし、様々な意見を聞きながら社内展開の手順や事例集を公開したうえで、社内に本格リリースしたいと考えています。

増原

初年度の2020年は、DPCが導入されている医療機関を中心に展開してきましたが、薬学教育の教材として使用できるとの意見もいただき、2021年から本格的に薬学部や医学部への普及に向けて活動をします。将来的には、フォーミュラリー作成・新薬評価のスキルを身に着けた薬学生育成や、そのスキルを十分に発揮できる現場の環境構築も担えるようなサービスを目指していきたいと思っています。また、医療機関ごとに発生する医薬品情報の収集・評価を、FINDATを通じて連携できる体制の構築により、医薬品情報の収集・評価の効率化及び共有化をさらに進め、国民に維持可能な医療の提供を実現したいと考えています。