高崎健康福祉大学薬学部 様

INTERVIEW

薬学教育にFINDATを活用しフォーミュラリー作成演習を導入

薬学部4年生の授業でFINDATを活用した演習を行っている高崎健康福祉大学。学生が自ら情報収集して作成したフォーミュラリーをFINDATと比較し、有効性・安全性・経済性などを考慮した、フォーミュラリーの作り方を学んでいます。今回は、教育現場でFINDATをどのように活用されているのか、薬剤疫学研究室の岡田裕子教授にお話を伺いました。

フォーミュラリー作成演習に活用できる情報としてFINDATを導入

高崎健康福祉大学薬学部 様 インタビュー風景

FINDATをお知りになったきっかけを教えてください。

日本調剤で働いている研究室の卒業生からFINDATを紹介されたことがきっかけです。その後ご縁があり、FINDAT事業部の上田さんから、本学薬学生向けにフォーミュラリーについて講義をしていただき、私自身もフォーミュラリーの魅力を感じた部分が大きかったです。

FINDATの導入については、膨大な医薬品情報を網羅的に収集、さらには評価していることが一番の決め手になりました。最新の情報を反映して頻繁に更新されているので信頼できる情報だと感じますね。また、根拠となった資料を分かりやすく提示しているので、その点も評価しています。

FINDATには標準フォーミュラリー、薬効群比較レビュー、新薬評価や海外規制機関情報などのコンテンツがありますが、特に期待されたものはございますか?

教科書だけではフォーミュラリーに関する情報がまだ少ないので、そこを補填する情報として標準フォーミュラリーと薬効群比較レビューに期待しました。実際、これまでの授業ではフォーミュラリー自体取り上げていなかったので、私の授業で初めて勉強する学生がほとんどだと思います。

また、教育者自身が必ずしも臨床現場での豊富な経験があるわけではないので、膨大なデータを収集、評価して作成されたFINDATは、私自身の勉強という意味でも非常にありがたいと思っています。また、授業の準備として事前に標準フォーミュラリーや薬効群比較レビューを確認することで、要点を押さえたメリハリのある授業ができ、大いに役立っています。多種多様な医薬品があるなかで、フォーミュラリーでの推奨度を通して、臨床上の重要性について学ぶこともできます。

自力で作成した「マイフォーミュラリー」をFINDATの標準フォーミュラリーと「答え合わせ」

高崎健康福祉大学薬学部 様 演習風景

実際にはどのような形で授業が行われるのですか。また、FINDATを活用する上でのポイントがあればご紹介ください。

学生自身がフォーミュラリーを作成する「マイフォーミュラリー」を授業に取り入れています。私からは薬効群の指定だけして、あとは学生自らフォーミュラリー作成のコンセプトを考えて推奨薬を検討し、その根拠となる情報もまとめます。学生はすぐに答えを求めがちですが、最初にお手本を見せるとどうしても引っ張られてしまうので、まずは自分の力で作成するプロセス、アクティブラーニンングを大切にしています。そして、最後にFINDATの標準フォーミュラリーと比較、いわば答え合わせをして見直すという流れです。学生の反応を見ると、「マイフォーミュラリー」とFINDATの推奨度が一致した時はすごく嬉しそうで、モチベーションも上がると好評です。

高崎健康福祉大学薬学部 様 資料

「標準フォーミュラリー」と比較して得られる様々な気づき

高崎健康福祉大学薬学部 様 演習風景

学生がフォーミュラリー作成の中で、つまずくポイントはございますか。

求めている情報をうまく見つけられなかったり、要点を押さえて分かりやすくまとめるのは難しいようです。学生の場合は情報収集の対象として添付文書やインタビューフォームから抜け出せないことも多いのですが、FINDATは原著論文やガイドラインなど様々なソースから情報が収集されています。最後に「マイフォーミュラリー」と比較する時に、自分が調べた範囲よりもずっと広くて深い情報が集約されていることに学生も気づきますので、実感として勉強になっていると思います。実際に、「新たな視点を得られた」「見比べることで勉強になった」という感想をよく聞きます。

FINDATの標準フォーミュラリーは、色々な分野の専門家が集まる有識者委員会での審議を経て作成されると聞いています。そのプロセスは学生にとっても興味が湧くポイントだと思います。

医薬品情報学は、演習を授業の中心に置かないと身につかない部分が多いです。常に最新情報に更新されているFINDATを活用することで、学生にとっても生きた医薬品情報に触れることができ、習熟度が高まると感じています。

改訂コアカリ「医療における意思決定に必要な医薬品情報」はフォーミュラリー作成演習でほぼ網羅

高崎健康福祉大学薬学部 様 インタビュー風景

薬学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂版が令和6年度の入学者から適用されています。FINDATの活用を含め、今後の方向性など伺えますか。

医薬品情報学は、改訂コア・カリキュラムでは主にD-3「医療における意思決定に必要な医薬品情報」の項目に当てはまります。なかでもD-3-3「医薬品情報の解析と評価」、D-3-4「医薬品情報の応用と創生」については、「マイフォーミュラリー」作成の演習でかなり網羅できると考えています。

添付文書を読み込んで情報取集したり、具体的なプロセスを主体的に学習することができるので、他の薬効群にも応用できるスキルが身に付けられると思います。「情報の解析と評価」に苦戦する場面はありますが、FINDATの標準フォーミュラリーと見比べることで、効果や適応症など様々な観点からの評価方法を学ぶことがきます。また、今後の授業の進め方として、自分で作成するだけでなく、学生同士でディスカッションする方式を取り入れることも検討しています。

少し前になりますが、全国の医薬品情報学の担当教員で、どのような演習を行っているかについて情報共有する機会があり、私からは「マイフォーミュラリー」の作成演習を紹介しました。教員同士でも話しましたが、やはり新しいカリキュラムでは、医薬品情報学が重要だと考えられますね。

フォーミュラリー作成の経験を臨床現場で活かしてほしい

高崎健康福祉大学薬学部 様 インタビュー風景

「マイフォーミュラリー」作成の演習は、臨床現場でどのように生かせますか?

5年生になると薬局と病院で実務実習を行いますので、自分で調べてフォーミュラリーを作成するという一連の経験が活かされることを期待しています。実際に医療現場で患者さんと接すると、患者さん一人ひとりの背景を考慮した医薬品選択が必要です。ちょうど昨年、本演習を受けた学生が5年生になり、実務実習に取り組んでいますので、演習で学んだことをどう生かせたか私も気になるところです。

FINDATを通してフォーミュラリーそのものを学習したい

高崎健康福祉大学薬学部 様 インタビュー風景

今後のFINDATへの期待、要望はございますか。

医薬品情報学を教育する立場として、フォーミュラリーそのもののメリットや、フォーミュラリーが地域医療や病院にどんな影響があるのか、FINDATを通して知ることができたら嬉しいです。例えば、FINDATを使ったフォーミュラリー運用の実例などがあれば知りたいです。

一般にフォーミュラリーに関する研究は経済性にフォーカスされがちですが、もっと広い範囲で、患者さんのアウトカムについても、ぜひ紹介してほしいです。また先にもお話した通り、学生には常に生きた情報に触れて欲しいので、FINDATも最新情報にどんどんアップデートされていくことを期待しています。

大学概要

名称
高崎健康福祉大学
所在地
群馬県高崎市中大類町37−1
開学
平成13年 高崎健康福祉大学 開学
平成18年 薬学部 薬学科 設置
学部
農学部:生物生産学科
人間発達学部:子ども教育学科
健康福祉学部:社会福祉学科、医療情報学科、健康栄養学科
保健医療学部:看護学科、理学療法学科
薬学部:薬学科
大学院
農学研究科:生物生産学専攻
健康福祉学研究科:保健福祉学専攻、医療福祉情報学専攻、食品栄養学専攻
保健医療学研究科:看護学専攻、理学療法学専攻
薬学研究科:薬学専攻