がん研究会有明病院 様

INTERVIEW

専門病院ならではのDI業務への活用や選択薬の厳選で効率化を促進

多忙な日常業務をこなしながらフォーミュラリー作成に取り組むべく、FINDATの導入に至ったがん研究会有明病院。遠方からも患者が受診する同院ならではのDI業務や、薬事審議委員会に向けた資料作成などでも、FINDATが信頼性の高い情報源になっているそうです。がん専門病院において、FINDATがどのように活用されているのか、薬剤部の山口正和部長と中野泰寛先生にお話を伺いました。

FINDATの導入でフォーミュラリー策定へと動き出すことが可能に

FINDATを導入された経緯や、当時の印象をお聞かせください。

がん研究会有明病院 様 インタビュー風景

山口部長

FINDATを採用した他の病院から話を聞いていたこともあり、2021年7月にDI室の担当者と共に説明を受けました。トライアルとして使用したうえで、2022年5月から正式に導入しています。

中野先生

私は2017年からDI室のチーフを努めていて、毎年、年間目標の1つにフォーミュラリーの策定を掲げていました。ただ、スタッフはそれぞれ複数の業務を抱えていて多忙ですし、かといって私が1人でフォーミュラリーを作成することは現実的には困難でした。それで正直なところ、二の足を踏んでいました。

ですが、FINDATの説明を聞いて「標準フォーミュラリーがここまでできているのだったら、独自のフォーミュラリーを策定できるかも」と思えたんです。

FINDAT導入に際して、他部署からの反応はいかがでしたか。

山口部長

当院には、次年度の機器整備やシステム導入に向けて各部署が説明や予算請求を行う委員会があり、FINDATは薬剤部のリストの中に入れていました。すると、委員会の先生方から「病院としてこういったシステムが必要なんじゃないか」という反応がありまして。我々の予想以上にFINDATに対して良い反応があったので、スムーズに導入できました。

FINDATならではの要約された情報を、代替薬の提案で活用

がん研究会有明病院 様 インタビュー風景

貴院では、どなたがどのようにFINDATを利用されていますか?

中野先生

私のように薬剤部でDI業務を担当する薬剤師や、病棟担当の薬剤師などが日常的にFINDATを使用しています。がん専門病院である当院には、患者さんが関東圏だけでなく、かなり遠方からも受診されていて、持参薬の種類も多岐にわたります。すべての持参薬を臨時購入していると不動在庫の量が膨大になってしまうので、代替薬の提案をする機会が非常に多く、その場面でFINDATを利用することが多いですね。

それは専門病院ならではと言えそうですね。代替薬の提案が多い領域や、活用シーンを教えてください。

中野先生

がん自体の治療薬ではなく、既往疾患に処方されている持参薬を当院採用薬に切り替えるときに活用することが多いですね。病棟担当者はインスリン製剤などの糖尿病関連薬や循環器領域、泌尿器領域などの薬をよく調べているようです。患者さんはこれらの薬を長期間服薬していることが多く、当院への入院が決まった後も「なるべく普段通りに過ごしたい」と服薬の継続を希望されることが多いです。

しかし、持参薬は当院の採用薬ではないことのほうが多いので、薬剤師は医師や患者さんに「この代替薬でも問題なく使用できる」と説明する必要があります。FINDATの情報はその際の拠りどころであり、後押しになる。吟味されたエビデンスがまとめて記載されているので、説明を行う場面での説得力や自信につながっていると感じています。

FINDATにはさまざまなコンテンツがあります。具体的にどのコンテンツをお使いいただいていますか?

中野先生

代替薬の提案は対応時間の短縮のためにも、情報のエッセンスが集約されていて概要を把握しやすい「標準フォーミュラリー」を参考にすることが多いですね。

一方で、新規採用薬やフォーミュラリー策定に関する資料を作成する場合には、「新薬評価」や同種同効薬の「薬効群比較レビュー」を読んで情報を深掘りしています。内容自体は信頼できるものだと実感しているので、すでに記載がある情報については時間をかけて作り直すようなことはせずにそのまま活用しています。さらに、不足している情報や最新の知見はないか、という目線で論文やガイドラインを調べ、必要に応じて情報を付け加えています。

山口部長

薬事審議委員会などで必要な資料は、中野先生が中心になって作成してくれています。FINDATをベースに、いつも非常に質の高い資料に仕上げてくれているんですよ。

2薬効群で院内フォーミュラリーを策定し、治療の標準化を支援

がん研究会有明病院 様 インタビュー風景

当初の課題だったフォーミュラリーの策定については、その後いかがでしょうか。

中野先生

FINDATを活用して、これまでにインスリン製剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬のフォーミュラリーを策定し、電子カルテ上に掲載するなどして院内周知を図っています。さらに現在、自分たちで最新の論文を調べる形で睡眠導入剤についても検討を進めているところです。

フォーミュラリーの具体的な内容や、運用状況について教えてください。

中野先生

他の病院が作成されたフォーミュラリーを見ると、第一選択薬と第二選択薬、条件付き推奨薬など複数の選択肢が設けられています。ですが、がん診療を専門とする当院の先生方からは、併存疾患の治療薬に関してはシンプルでわかりやすいフォーミュラリーを希望する声が強いんです。

そのため、HMG-CoA還元酵素阻害薬のフォーミュラリーでは2種類の薬剤のみ記載して、一般的には使用頻度の高い薬剤の採用を削るなど、思い切った内容にしました。

山口部長

がん領域の診療に特化した病院ですから、その他の領域ではフォーミュラリーによって治療の標準化を図り、その結果として廃棄薬を減らしていければ、フォーミュラリーの本来の目的にも適うと考えています。

信頼に足る第三者機関として、FINDATにより大きな役割を期待

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では、がん領域において、FINDATがお役に立てる場面はありますか?

中野先生

がんの領域は、次々に新しい研究成果が出ていて情報がスピーディーに更新されていますし、公的な情報以上のことはFINDATでは扱いにくいかもしれませんね。ですが、FINDATの利用者は薬剤の臨床的な位置づけが知りたくてアクセスすることが多いと思いますし、実際にそこに手応えを感じたこともありますよ。

例えば、新たに登場した抗がん剤の有用性について、どこまでデータがあって、逆にどういうデータがないのかFINDATで確認できた、ということがありました。薬剤の有用性について、具体的な情報が得られることはもちろん重要なのですが、データがないものは「ない」と確認できることも、エビデンスに基づいた治療を行う上で、非常に重要ですね。

内容を拡充してほしいコンテンツはありますか? また今後、FINDATを活用できそうな場面や業務があれば教えてください。

中野先生

今年から薬学部生の実習を受け入れていて、これから薬剤師業務に携わる学生にはフォーミュラリーについてぜひ知ってほしいと思っているので、FINDATのe-ラーニングを利用することがあります。なので、学生向けにより平易なコンテンツがあると助かりますね。

山口部長

昨今、医薬品の購入や管理に関して、管理部門のスタッフだけでなく、安全面などに対して科学的な視点をもつ薬剤師にも積極的に関わってほしいという要望があります。そのような業務において、FINDATには可能性を感じています。

最後に、今後のFINDATに期待することをお聞かせください。

山口部長

未承認薬や適応外使用について情報が乏しい現状がありますが、評価や比較ではなく、現時点の研究成果や論文を紹介してもらえると、より便利になりそうですね。

中野先生

スケールの大きな話になりますが、例えばバイオ後続品は、普及がなかなか進んでいません。FINDATにも一部の薬効群でレビューはありますが、バイオ後続品に共通する同等性や同質性、あるいは注意点を解説するようなコンテンツがあるとありがたいですね。

規制当局とは別に、FINDATのような第三者機関から提示された客観的で中立性の高い見解や知見によって、薬剤師が医薬品をチェックする力を高められれば、医薬品全般の品質向上にも寄与できるのではないかと考えています。

病院概要

名称
がん研究会有明病院
所在地
東京都江東区有明3-8-31
開設年月日
昭和9年
病床数
686床(一般651床、ICU10床、緩和25床)
診療科目
呼吸器センター、消化器センター(食道外科、胃外科、大腸外科、肝・胆・膵外科、消化器化学療法科、肝・胆・膵内科、上部消化管内科、下部消化管内科、直腸がん集学的治療センター、頭頸部がん低侵襲治療センター)、乳腺センター、婦人科、頭頸科、脳腫瘍外科、整形外科、泌尿器科、血液腫瘍科、総合腫瘍科、皮膚腫瘍科、サルコーマセンター、先端医療開発科、総合診療部、麻酔科(ペインクリニック)、腫瘍精神科、形成外科、眼科、感染症科、歯科