茨城西南医療センター病院 様

INTERVIEW

FINDATを活用したフォーミュラリーの運用で薬剤費の削減を実現

FINDATの導入によりフォーミュラリーを効率的に作成し、短期間で運用開始に至った茨城西南医療センター病院。かねてからの課題であった薬剤費の削減にも、成果が出ているそうです。病院経営の将来を見すえて自らFINDATの導入を推進された野村明広院長に、院内フォーミュラリー作成におけるFINDATの役割や、地域フォーミュラリー普及への展望などを伺いました。

患者利益と薬剤費削減、双方のニーズを満たすフォーミュラリーをFINDATで作成

茨城西南医療センター病院 様 インタビュー風景

院内フォーミュラリーを導入された経緯を教えてください。

古河赤十字病院院長の小山信一郎先生からお誘いを受け、2020年1月に増原先生の講演を聞いた際に、初めてフォーミュラリーのことを知りました。

DPC病院では傷病名と診療行為に応じた包括的な報酬が定められていますので、使用薬剤の種類や量は病院全体の収益を大きく左右します。当院では以前から採用薬の種類が多いことや、高額な先発医薬品の処方量が多いことが課題でした。FINDATで院内フォーミュラリーを作成して運用できれば、これらの改善が見込めるのではないかと考えたのです。

FINDATの導入には、院長先生自ら取り組まれたそうですね。

毎月開催される薬事審議会では、私が議長をしています。そこですぐに院内フォーミュラリーを議題に挙げ、まずは薬剤購入費で大きな効果が予測できたPPI・P-CABでフォーミュラリーの作成を提案しました。
もちろん、経済面だけを目的にフォーミュラリーを導入することは医療の安全性や公平性を損ないますし、先生方の診療への意欲や向学心を削ぐことにもなりかねません。実際、フォーミュラリーの説明を最初に行った際には、「今まで通りの処方をしたい」という意見も多数ありました。

院内への説明では、どのような点を重視されましたか?

先生方が処方薬を選択する際には、これまでのご経験に加え、「この疾患にはこの薬」というイメージも大きいように感じています。ですから処方経験の少ない薬を安心して選んでもらうためには、その薬が信頼に足るという客観的な評価が重要でした。
その点、FINDATの標準フォーミュラリーでは、推奨薬が国内外のガイドライン、原著論文、二次情報などに基づいて選定されています。情報に客観的な裏付けがあり、正確性や妥当性が担保されていると感じましたので、先生方にはこの点をよくお伝えしました。同時に薬剤費の削減効果を試算し、数値化して「経済的にもこれだけのメリットがあります」と説明し、理解を得ていきました。

検討開始から3か月でフォーミュラリーの運用を開始

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院内フォーミュラリーの推奨薬は、どのように選定されていますか。

PPI・P-CABではFINDATの標準フォーミュラリーを参考にしながら第一選択薬、第二選択薬を選定し、病院経営のメリットも考慮しながら後発医薬品を含めてそれぞれに推奨薬を確定。推奨薬以外の医薬品を使用したい場合には、医師が患者さんごとに臨時申請を行うようにして、フォーミュラリーの存在を知った講演から3か月後の2020年4月には、PPI・P-CABで院内フォーミュラリーの運用を始めました。

現在は、多くの領域でフォーミュラリーを運用されていますね。

ええ。効果が見込める薬効群では積極的にフォーミュラリーを運用したいと考え、目標としては薬事審議会ごとに1薬効群ずつ、FINDATを利用しながら作成に取り組みました。
現在では神経障害性疼痛治療薬、ACE阻害薬、ARB、フィブラート系薬、インスリン製剤、過活動膀胱治療薬、ビスホスホネートなど10の薬効群で院内フォーミュラリーを運用しています。
ただ、推奨薬が後発医薬品になると、一般名が製品名になりますので、医師がこれを覚えて入力するのは業務上大きな負担になります。そこでシステム上では、これまで処方していた先発品名の冒頭3文字を入力すれば、代替となる推奨薬の後発医薬品名が表示されるように。こういった工夫も行って、スムーズな運用に努めています。

運用を始めてから、先生方の反応はいかがですか。

導入まではやはり抵抗感もあったようですが、実際に院内フォーミュラリーに基づいて後発医薬品を処方し、効果に違いはないと実感できると、急速に受け入れてもらえるように。想像していた以上にスムーズでした。

処方量や薬剤費の収支でも確かな変化を実感

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薬剤費の面ではどのような変化がありましたか?

当院の院内フォーミュラリーでは、PPI・P-CABの推奨薬はラベプラゾール、ランソプラゾールの後発医薬品です。
院内フォーミュラリー導入前の2019年7~12月、導入直後の2020年7~12月、また導入1年後の2021年7~12月について、推奨薬の処方件数をみますと、導入前の約180件/月から導入直後には約650件/月にまで増加し、推奨薬以外の臨時申請薬、ここには導入まで処方数が多かった先発医薬品も含まれますが、それは導入前の約410件/月から導入直後には約9件/月まで減少しました。推奨薬と臨時申請薬を合わせた処方件数全体は、約590件/月から約660件/月と推移しましたが、薬価換算しますと約36.5万円/月から9.7万円/月へと、大幅に削減できています。この傾向は導入1年後も続いていて、導入の効果を感じています。

他の薬効群でも、効果は出ていますか?

ARBでも、フォーミュラリー導入前の2020年1~12月と2021年1~12月、各1年間について処方状況の変化をみますと、使用数量は約13,000錠から約13,900錠と推移する一方、薬剤費は年間で11万円程度削減できました。
神経障害性疼痛治療薬でも、導入前6か月と導入後6か月で変化をみたところ、使用数量は約9,500錠から8,500錠と推移する中で第一選択薬の使用割合が73.5%から81.7%まで増加し、薬剤費は半年間で約45万円と大きく減少しています。

この2年間のご経験から、院内フォーミュラリーは病院経営においてどのような意義をもつとお考えですか?

病院が薬剤関連で得られる収益としては、薬価差、後発医薬品使用体制加算、薬剤管理指導料があります。かつては薬価差が収益に大きく寄与していましたが、消費税が10%になってからはそのメリットは縮小しました。さらに、当院のようなDPC病院では薬剤購入費を極力抑える必要がありますので、フォーミュラリーを活用して採用薬や処方薬を厳選することが重要になるでしょう。

院内フォーミュラリーにおいて、FINDATはどのようにお役に立てているでしょうか。

信頼性の高いフォーミュラリーの作成には膨大な情報の収集と検討が必要ですが、このような作業を院内で行うことは非常に困難です。FINDATの標準フォーミュラリーを基準に、各病院が経営効果も加味して病院独自のフォーミュラリーを策定できれば、患者さんにとっても病院にとっても大きな力になると考えます。

地域フォーミュラリーへの展開に向けて

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貴院では、近隣の中核病院とともに地域フォーミュラリーの運用に向けて活動されていると伺いました。その理由や、現在の状況を教えてください。

茨城県の県西地区では古河赤十字病院と友愛記念病院、そして当院の3病院が協力しながら地域医療を支えていますが、各病院が厳しい経営状況に置かれる今、経営面でも共通のメリットになる取り組みが必要になると考え、「古河・猿島郡地域フォーミュラリー」への参加を決めました。
現在は、まず各病院で院内フォーミュラリーの作成と運用を進めています。また、近い将来には地域の開業医院や薬局に向けて、フォーミュラリーの勉強会を開催する予定です。

地域フォーミュラリーの実現には、どのような取り組みが必要でしょうか。

地域医療支援病院では、近隣の医療機関からご紹介いただいた患者さんを治療して、治療が終われば逆紹介を行います。当院では入院患者さんに持参薬があれば、原則として院内フォーミュラリーに基づいた切り替えを行いますので、退院する患者さんはその薬を持って地域へ戻られることに。これを積み重ねていけば、地域にも当院の処方が少しずつ拡大し、結果的に後発医薬品の使用もより普及するのではないでしょうか。
フォーミュラリーの導入で明らかなメリットがあるのは、やはり一定の規模をもつ地域中核病院だと思いますので、まずはそこで院内フォーミュラリーを運用し、また近隣の病院と協力しながらフォーミュラリーのすり合わせを行って、地域フォーミュラリーへ拡大できればと考えています。

最後に、フォーミュラリーの普及に向けたFINDATへの期待をお聞かせください。

わが国の国民医療費は増加の一途をたどっています。また病院経営も厳しさを増す今、薬剤費の削減は避けて通れない課題です。かといって医療の質を落とすようなことがあれば本末転倒です。地域医療がそのような状況にいる中、フォーミュラリーは薬剤費削減において重要な切り札になり得ます。そして当院での経験から、フォーミュラリーの導入においては、FINDATの活用が1つの有用な足掛かりになると実感しているところです。

病院概要

名称
茨城西南医療センター病院
所在地
茨城県猿島郡境町2190
開設年月日
昭和21年03月
病床数
一般358床(ICU10床、MFICU6床、NICU9床、GCU12床、感染症2床)
診療科目
内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、神経内科、リウマチ・膠原病内科、 外科、消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺・甲状腺外科、脳神経外科、 整形外科、形成外科、小児科、産婦人科、皮膚科、泌尿器科、眼科、 耳鼻咽喉科・頭頸部外科、麻酔科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、 救急科、精神科、病理診断科