岡山市立市民病院 様
INTERVIEW
医薬品コスト適正化やDI業務のブラッシュアップにFINDATを活用
以前より病院の方針として後発医薬品の導入を推進し、院内フォーミュラリーの運用で成果を上げている岡山市立市民病院。FINDATを導入され、より効率的で質の高い業務の実現に取り組まれています。今回は院内フォーミュラリーやFINDATがDI業務や医薬品管理にどのような変化をもたらしているのか、薬剤部の松山哲史先生と横井尋和先生からお話を伺いました。
医薬品コストの適正化をめざして院内フォーミュラリーを運用、FINDATは信頼に足る情報源
貴院では現在、複数の薬効群で院内フォーミュラリーを策定し、運用されているそうですね。
松山先生
当院では以前から、医療経済的な観点に基づき、後発医薬品の導入や処方に病院を挙げて取り組んでいます。
しかし、薬剤の選定にあたっては先発品・後発品を問わずやはり客観的なデータが必要です。薬価だけでなく、薬の効能効果や安全性などもふまえて後発品の使用を促進する上ではフォーミュラリーが非常に有効だと考え、各科の先生方と議論を重ね、フォーミュラリーを策定していきました。
横井先生
現時点(2023年4月現在)ではPPIの内服薬と注射剤、H2受容体拮抗薬、NSAIDs、ARB、スタチンなど6薬効群でフォーミュラリーを作成し、先生方の処方時にご利用いただいています。
具体的なフォーミュラリーの作成において、ご苦労されたことはありましたか?
またFINDATを導入された経緯についてもお聞かせください。
松山先生
フォーミュラリー作成の過程では、客観的な医薬品情報をどのように準備すればよいのか、最新の情報をどれだけタイムリーに入手できるか、また作業に要するマンパワーなど、さまざまな課題にも直面しましたね。
横井先生
そのような時期にFINDATのトライアルを利用することに。情報の質については有用だと感じましたし、情報量にも満足でき、「これだけの情報量があれば導入する意義はある」と判断できました。
松山先生
民間の一企業が運用するプラットフォームであることにはさまざまな議論もあるかとは思います。しかし実際に見てみますと、客観性や中立性の担保にはかなり手をかけられていて、信頼できる情報源として積極的に利用できるのではと考えました。
そこで医師を主体とする病院スタッフに向けたFINDATの説明会を開催。データに基づいて客観的に評価された情報にはドクターサイドからも評価が得られ、導入に至りました。
フォーミュラリーで処方は大きく変化、持参薬の切り替えでも課題を解消
院内へのフォーミュラリーの導入や普及は、どのように進めていったのでしょうか?
松山先生
実際に運用してからトラブルが生じることのないように、病院の上層部の先生方や各診療科のトップの先生方にもご参加いただいて、検討を進めました。
医師の先生方は、フォーミュラリーがなければこれまでのご経験から選ばれた先発品を処方されがちです。しかし、実際には全ての疾患で先発品が必要ではないとご理解いただいていますし、経済的な側面から当院の事情も含めてお話しすると同意がいただけました。
またフォーミュラリーでは、掲載薬剤以外は絶対使えないというわけではなく、あくまでも推奨薬を決めているとご説明すると、「それであれば反対しないよ」とご協力いただける雰囲気になりました。
現在、6薬効群でフォーミュラリーを運用されているということですが、処方の動向に変化はありましたか?
松山先生
当初はフォーミュラリーをどの程度使っていただけるのか不安もあり、院内処方のみの適用にして、院外処方では薬剤を自由に選択できるかたちでスタートしました。
しかし使用量をみますと、1年、2年と年を追うごとに、院内処方はもちろん、院外処方でもフォーミュラリーでの第1推奨薬が大幅に伸び、第2推奨薬以下の割合はかなり減少することに。現在ではフォーミュラリーでの推奨が、院内外を問わず処方に明確に反映されています。
持参薬の切り替えについても、変化があったそうですね。
松山先生
院内フォーミュラリーを策定した薬効群では、患者さんが持参したお薬の代替薬に関しても「これに切り替える」というルールを定めました。せっかくフォーミュラリーで処方の推奨薬を決めても、持参薬と同成分のものが院内にないからと逐一購入していたら、意味がありませんので。
院内の課題となっていた代替薬の購入についても同時に解決できたことは良かったです。
横井先生
代替薬については、DI担当ではない病棟や調剤室の薬剤師が先生方から問い合わせを受けることもあります。フォーミュラリーや代替薬のルールに関しては各部署で確認できますので、その場ですぐにお返事できるようになりました。
「中立的な立場でのDI業務がしたい」、長年の思いを実現
DI業務においては、薬事委員会に向けた資料作成も大きな割合を占めるとお聞きします。FINDATをご利用いただく場面はありますか?
横井先生
新薬評価には既存治療薬との比較や国内外のガイドライン等での評価が記載されていますし、薬効群レビューもよく参考にしています。これらの情報があると、今回申請された新薬と既存薬は何が違うのか、すでに採用されている既存薬との切り替えなのか、あるいは既存薬に加えて今回の薬なのか。審議される先生方とそういった議論がしやすく、採否の判断も変わってくると感じています。
それまでは、どのように情報収集をされていたのでしょうか。
横井先生
医薬品情報の入手先、参照先としてはやはり添付文書やインタビューフォーム、製薬会社からの製品情報などを参考にすることが多かったですね。
「中立的な立場から評価を行うようなDI業務がしたい」とずっと思っていましたが、業務量と時間、労力の兼ね合いから、なかなか実現できていませんでした。FINDATに掲載された情報は外部の専門家の評価も受けていて、情報の公平性、中立性が期待できます。また、それらの情報が整理された状態でまとまっているのも役立っています。
新薬評価の内容に関しては、どのように評価されていますか?
松山先生
当院のようにDI業務専従の薬剤師がいても、薬事委員会のために客観的な情報データの収集ができるかといわれると、かなり厳しい。その点、FINDATでは採用に対する最終的な評価まで提示してくれています。今まで自分たちだけで示せなかった情報を出せるようなったことは、薬剤師としてのやりがいにもつながっているんじゃないかな。
さらに、新薬の気になるポイントもある程度わかりますので、採用後に「先生使われてみてどうですか」と聞きやすいですよね。評価に対するスタートの位置が、変わってきたと思います。
FINDATによる情報・評価の重みづけから、適正な医薬品管理や業務フローの効率化を期待
FINDATという新たな情報源により、業務効率において何らかの変化はありましたか。また、FINDATが業務改善や病院経営でお役に立てる可能性があれば、展望をおきかせください。
松山先生
採用薬の見直しにおいても、フォーミュラリーやFINDATの情報は適正な評価の根拠になっています。
採用薬は医師が増えるごとに、あるいは新薬が登場するごとに増えがちですが、ミスが起こる可能性も増えますし、在庫管理業務も煩雑になります。FINDATからは適正な薬剤のラインアップもある程度見えてきますので、将来的にはそこにも全面的に手を付けていきたいですね。
横井先生
例えば院内で100種類の薬剤を使うより、10種類の本当に必要な薬だけを使うようになれば、1人の薬剤師が扱う薬の数は絞られます。その結果、それぞれの薬の知識や薬に対する経験値が高まり、調剤や服薬指導の質は向上しますし、副作用の早期発見などにもつながるのではないでしょうか。絞れるものは絞っていくというのも、1つの考え方ではあると思います。
またそれにより、DI業務や病棟業務を効率化できれば、今話題になっている医師業務のタスクシフトなど、薬剤師が新たな活躍の場をもつ可能性も高くなるのではないでしょうか。
松山先生
当院の処方システムには医師による承認機能があり、まずはその代行業務などが始められるかもしれません。さらにフォーミュラリーやプロトコールの策定へと展開できれば、タスクシフトに関しても薬剤師側からよりよい提案ができるのではないか。プロトコールは、すでに一部運用している領域もあります。
横井先生
院外処方箋の疑義照会に対しても、プロトコールが確立していれば、院内の薬剤師が回答を代行でき、先生方や調剤薬局さんの負担を軽減できそうです。
今後のFINDATに期待することをお聞かせください。
松山先生
コロナ禍以降、各病院は安全な診療の継続に労力を割かれ、業務の大幅な改善などには着手しにくい現状があります。ですが当院内をみる限り、フォーミュラリーへの信頼度は確実に高まっていますし、それらの活用によって、薬剤部や薬効群という個々の枠組みの中では、業務の質の向上や効率化、コストの削減も見えてきています。
フォーミュラリーに関しては、地域フォーミュラリーへの取り組みも今後必要になってくると思いますが、薬剤師間での認知すらまだ十分ではないと感じるところもあります。医薬品情報のプラットフォームの広がりが、フォーミュラリーの普及にもつながるのではないか。そんな期待も持っているところです。
病院概要
- 名称
- 岡山市立市民病院
- 所在地
- 岡山県岡山市北区北長瀬表町三丁目20番1号
- 開設年月日
- 昭和11年4月
- 病床数
- 400床(一般387床、結核病床7床、感染症病床6床)
- 診療科目
- 内科(消化器内科、血液内科、糖尿病内科、内分泌内科、総合内科、呼吸器内科、循環器内科、脳神経内科、心療内科、感染症内科、膠原病・リウマチ内科、腎臓内科)、脳神経外科、外科、整形外科、産婦人科、小児科、眼科、耳鼻いんこう科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科、形成外科、救急科、放射線科、麻酔科、病理診断科、臨床検査科